うみをすすむ

0歳10ヶ月、網膜芽細胞腫(レティノブラストーマ)という目の小児がんで右目を摘出した息子との日々のこと。病気と向き合う記録。

10歳 義眼が入らなくなった①

このブログを書くのもいつぶりだろうという感じです。

コロナ禍に入り、余裕がなかったのも一つ大きくありますが、何かあったとしても息子はもうだいぶ大きくなって自分自身の世界ができつつある。親としてこういった形で介入する時期は過ぎたと思っていて書くつもりはなかったのです。

そんな中、今年のはじめからまったく義眼が入らなくなりました。その一連の過程を<書いて欲しい>と本人から要望があったため、再び記録することにしました。


10歳になり、自分の病気のことも自分でインターネットを使い調べ、今回の義眼が入らなくなったことについても調べ、その過程で私のblogを見つけたそうです。
(いつか自分のことを知る手がかりにと書いていたので、いつか見つかることは考えていましたが、まさか小学生のうちに見つけるとは思わなかったよ…)

「僕のことが誰かの役に立つかもしれないし、元気かどうか待ってる人がいるかもしれないでしょ。だからblogを書いて欲しい」

彼の気持ちを受けて今この文章を書いています。
そして本人も読んでいます



なお、まだ終わっておらずこれは現在進行形です。


また後にも出てくるかもしれませんが、今の状況は義眼を使っている子供に必ず起こることではありませんし、網膜芽細胞腫・眼球摘出・義眼になった中でもかなりレアケースです。うちの子も、自分もそうなっちゃうのかと、どうか過剰な心配をされませんよう。お願いいたします。(私もだいぶ聞いたり探したりましたが、似たケースがまったく見当たらなかったくらいです)
現在進行形での目のトラブルはありますが、それ以外は元気に楽しく学校生活を送っています。



そしてレアケース故、残念ながら今まで手探りで情報が殆どありません。もしももしも同じような状況の方がいらっしゃいましたらメールやメッセージをいただけたら嬉しいです。




<義眼が頻繁に落ちて、常時はみでるようになってきた>

小学校に入学してからも目に関する大きなトラブルもなくずっと学校生活も順調に過ごしていましたが2022年の後半から義眼の調子が悪くなっていました。

義眼の調子が悪いというか、もう入る義眼が作れない。義眼床が義眼を入れられない形状になってきていたというのが正しいです。

もう義眼を受けるところが殆どなく、ちょっとした刺激で取れてしまう

2023年に入って恒例の小児科の診察を終えてからしばらくしてからは本格的に調子が悪くなり下瞼は義眼からかかる力で変形して、ちょこっと瞼からはみ出ている状態が続き、しばらくすると高い頻度でするっと出てきてしまうように。

しばらくあまりいい形で入っていないのは気になっていてどうすべきかとは思っていたけれど、こんなにも入らなくなるまでになるとは・・・

<義眼はずっと薄くてギリギリだった>

そもそも息子の義眼は数年前からずっと薄くて、それは義眼台のおかげでもあり軽くて本当に綺麗に入っていました。
状況を知らなかった人も後で知った時に「義眼だって気づかなかった!」と言われるくらい。
写真を撮ってもわからないくらい(写真家さんのWEBサイトにモデルとして掲載されたこともありました。今その写真を自分で見ても分からない)


でも大きくなっていくにつれて、義眼の下側が「もう削れない」というくらいの薄さになり、これ以上薄いものは作れないかもと義眼師さんにも言われていました。私から見ても、これよくはまっているな…というくらい下側のポケットがなくなってきていることが気になっていましたが…


何故下側のポケットがなくなってきているかというと顔の成長のために眼球摘出後に入れた「義眼台」という名のボール。このボールの位置が成長によってかなり下に来てしまって、それがちょうど下瞼の下あたりにきていたから義眼床という義眼を入れるスペース、ちょうど下瞼のあたりを圧迫してしまっていました。
経過観察のために撮っていたMRIの画像からすると、健眼との差5mm以上。

これは義眼台の位置が変わったというよりは、成長によってできた余白を肉が埋めていく形で発達して、息子の場合は義眼台、ボールの上側に肉がついていったことで起こっていました。

網膜芽細胞腫の特性上かなり小さな時に手術を行っているので、その後人によってどういう風な変化になるかは予測ができません。義眼台は成長を考慮して赤ちゃんの時に入れられる最大の大きさが入れられています。が、やはり赤ちゃん時に入れられる大きさには限度があります。
(ちなみにこの義眼台は眼球摘出をした人、子供が全員入れる訳ではありません。お世話になっている病院が入れる方針だったというだけです。入っていない人もたくさんいます。)




そしてその義眼の薄さ故に下瞼(の裏側)に刺激が多くかかり肉芽ができてきていました。怪我をした時に盛り上がるようなイメージですが日常+目を擦ったりと刺激が繰り返されることで肉の小さな山(肉芽・良性)ができていてこれが更に義眼を入りにくくしていました。


友人にも成長過程で起こったの?とよく聞かれるのですが、それも確かにあります。
でも同じ状況の他の人には起こっていません。
成長過程+義眼台の位置、義眼の形状・薄さ+それによる変化 などいくつも要因が同時に重なって起きてしまったレアケースです。


<義眼が本格的に入らなくなる・落下する>

2月くらいからは義眼の落下を防ぐため眼帯をすることが多くなり日常生活、学校生活、取れてしまうことで影響がでるように。

義眼を日中入れずにいれば、と思われるかもしれないけれどその選択肢はないのです。

10歳。

今はかなりの成長期。入れておかないと顔の変形につながってしまうし、長期で入れない時期が続くと義眼床(義眼を入れる部分)が萎縮してしまって義眼が入るスペースが無くなってしまう。

義眼師さんと病院を何度も行ったり来たり、義眼所も病院も平日日中なので学校を早退して、ということも何度もありました。

義眼師さんのアドバイスで少しでも状況が改善されないか、これでマシになった方がいたらしいとテープで下瞼から上にひっぱって強引に瞼を閉じた状態にして型をつけて生活するというのもやってみて、一時的に回復はして「いけるかも!」となった時もありましたが数週で落ちてきて逆戻り。

もう義眼の調整でどうにかなる状況ではなくなり
手がなくなり

主治医に相談し、遂に本格的に手術が検討されるようになりました。


つづく