うみをすすむ

0歳10ヶ月、網膜芽細胞腫(レティノブラストーマ)という目の小児がんで右目を摘出した息子との日々のこと。病気と向き合う記録。

10歳 義眼が入らなくなった 3.5

その日の備忘録

ーーーー
坊と一緒に何日か手術のため入院をしていました
持病に関することだけど
命に関わるだとか再発とかではなく
QOLが著しく低下する事態になったため。

本人はとても元気。
術後もこちらが大丈夫なん?って聞いてしまうほど元気。

9年ぶりの景色。
まさかここに帰ってくるとは思わなくて
同じ病棟。たぶん同じ部屋
小児科ではないからどこかドライな雰囲気

走馬灯とは違うけど
当時の気持ちとかが
ぶわっと色々蘇ってきて

あの時はちょうどお正月
賑わいがあるはずなのに
病室も待合も空気もしんっとしていて
世界がモノクロのように本当に見えたし
世界に断絶されたようで

情報に頭が追いつかない
決めなければいけないことも多すぎる
なによりショックが大きすぎると
涙さえ出ないんだなって
やけに冷静に思ったのを覚えています
ちゃんと泣いたのは
手術室から帰ってきた時だったな

長い長いソファで高速ハイハイをしていたこと
ソファでごろごろにゃーんをエンドレスで読み聞かせていたこと
病室でおせちを食べたこと

今の彼は
その当時の面影はあるけど
やはり9年分成長していて頼もしくって
入院中ですら最高に面白かった

命に関わるような手術でないにしろ
全て理解できるから
怖かったと思うのに
おかえり、ってぎゅっと手を握ると
自分の状況や麻酔についてぽつぽつ語り出す
置かれている状況を自分の糧にしていてびっくり

もう見ることがないようにと願っていた景色だけど
一つ塗り替えられて
良かったかもしれないな
それに付き添いで一緒に入院なんてことは
この先無いかもしれない

最高に寝にくいソファーベッドも
病室で一緒に食べるごはんも
しんどいけど愛おしい
(でももうこの先無いことを祈る)

いつも思うけど
この子は本当に手を差し伸べてくれる人の運が良い。前回も、今回も手厚い布陣の先生方だったのは感謝です

 

10歳 義眼が入らなくなった③ 手術ー1

大学病院なので先生が変わることは何度も。若手の先生は修行に出られてしまうのですが今回このタイミングで...という。

きっちり引き継ぎはしていただけたのはよかったですがいきなり手術

 

義眼台を入れ替えるか、という話はずっとあったのですが、安定しているものを取り除くことが必要なのか?何か策はないのかとこちらからの意向も話して

義眼台は入れ替えずに外科的手術でポケットを作る(私の認識です)ことにー

手術は4月の初めに決まりました

 

この手術の入院の日は新学年のスタートの日

入院と同時に5年生

クラスメイトが誰か、担任が誰かも分からない状況になってしまうのだけどこの分野の手術はぎゅうぎゅうで、できる時にやった方がいいと。

本人にも聞いてそのスケジュールになりました。

 

<術前に必要なこと>

目の手術とはいえ部分麻酔では厳しいので全身麻酔下。麻酔科にいって問診を受け説明を聞きました

 

血液検査や呼吸器系の検査なども行われます。

大分緩和されたとはいえまだ病院はコロナに対しては厳しいです

コロナの影響もありますが元々他感染症に対しても大きな病院なので厳しいです。

重症、重篤な患者さんも多いのでここはしょうがなく。術前にPCR検査も別途行われました。

 

 

入院時は個室を依頼。

眼科病棟になるので大人がほぼほぼのため

全身麻酔の手術を控えているため

 

あとまだまだコロナ仕様のため途中面会は不可でした。

付き添いが1人までという縛りがあるためです。付き添いを申請すると退院まで出ることはできません。

 

一度経験してるのもありますが

付き添い入院は付き添い側もまあまあハード

ベッドは基本ないしご飯も出ません。

 

個室は変形できるソファーがあるのでベッドを借りるよりこれがいいですよと聞いていて

軽いお布団と枕と飲み物、スープなどは持参しました。

 

つづく

10歳 義眼が入らなくなった② 手術の検討

<手術の検討>

本格的に義眼が入らなくなり手術の検討の話が具体的に出てくるようになって

最初に出たのは「義眼台の入れ替え」

 

一番最初の手術、眼球摘出時の段階から「義眼台の入れ替え」はあるかもしれない、という話は眼科、小児科共にあって頭の片隅で覚悟はしていました。(息子が行っている病院は小児科と眼科と別れていて、両方に診ていただき総合する形です。小児眼科という形のところもあります)


でもそれは18歳以降とか成長期がある程度済んだ想定で成長期真っ只中でやることはまったくの想定外。

 

<義眼台を入れ替えるってどういうことか?>
一旦入っている義眼台(ボール)を取り出して体の大きさにあったものを入れ直す。

言葉で書くとすごく単純っぽい!

んですよね。

ボールだし。

まあ樹脂ボールだし。

けれど、そんなに簡単ではないのです。

 


ボールは異物。

体にとっては排除すべき物質です。

なので当然定着しないこともあります。術後違和感に悩むこともあるし異物と認識されたら外に出てくる。これを露出といい露出すれば再手術、やり直しです。

 

体と親和性の高い物質を入れては?と思われるかもしれませんが元々の原因、網膜芽細胞腫は癌の一種、発症は5歳未満、赤ちゃん、幼児と呼ばれる時期の子が多い。成長の過程で異変があった場合に取り除けないといけない。

義眼台はあくまで発達をサポートするものなので体の組織と親和性が高過ぎて癒着しすぎてしまうとそれはそれで弊害があるのです。

 

そして入れ替えをするなら18歳くらいと言われたのは肉体的な成長がそのあたりで止まってくるからです。その年齢に達すると成長を考慮に入れることをしなくてよくなってきます。

 

今位置的には良くないけれど、うまく定着している義眼台を10歳の成長期で入れ直すということはせっかくの安定を捨てるということ。「露出」のリスクがまた上がるということ。

 

入れ直したからといって必ずしも良くなる保証も残念ながら ない、ということ。

 

 

 

こうなってくると義眼台がなかったら良かったんじゃないというくらい複雑ですが...

 

義眼台が入っていなくても義眼を正しく装着することで成長フォローはなされます。

でも入っていることでのサポート力は大きく、なければ成長を全て義眼に委ねることになる。

綺麗にはまってる時は義眼に動きも出ていました。(これは人によりますが)入れていただいたこと自体は後悔はしていません。

 

<安定しているもの(義眼台)の入れ直しが必要なの?>

他に何か手がないかというのをずっと考えていました。

 

義眼が入らないのはポケットがなくなってしまったから。

 

刺激によってできた肉芽たちを取り除き何らかの形でポケットを作ることができたら解決しないのか?

義眼師さんの意見からも総合してそういう想いが固まり診察に臨んだのですが

 

 

 

「異動になりました。引き継ぎますね」

 

 

 

ええええ こ、このタイミングでっ...

 

大学病院あるあるで、過去もよくあって、まあみなさん修行に出るんですが、それ自体はいいんですがこのタイミングで...!?

手術を検討する局面で新しい先生に引き継がれることになりました

 

つづく

 

10歳 義眼が入らなくなった①

このブログを書くのもいつぶりだろうという感じです。

コロナ禍に入り、余裕がなかったのも一つ大きくありますが、何かあったとしても息子はもうだいぶ大きくなって自分自身の世界ができつつある。親としてこういった形で介入する時期は過ぎたと思っていて書くつもりはなかったのです。

そんな中、今年のはじめからまったく義眼が入らなくなりました。その一連の過程を<書いて欲しい>と本人から要望があったため、再び記録することにしました。


10歳になり、自分の病気のことも自分でインターネットを使い調べ、今回の義眼が入らなくなったことについても調べ、その過程で私のblogを見つけたそうです。
(いつか自分のことを知る手がかりにと書いていたので、いつか見つかることは考えていましたが、まさか小学生のうちに見つけるとは思わなかったよ…)

「僕のことが誰かの役に立つかもしれないし、元気かどうか待ってる人がいるかもしれないでしょ。だからblogを書いて欲しい」

彼の気持ちを受けて今この文章を書いています。
そして本人も読んでいます



なお、まだ終わっておらずこれは現在進行形です。


また後にも出てくるかもしれませんが、今の状況は義眼を使っている子供に必ず起こることではありませんし、網膜芽細胞腫・眼球摘出・義眼になった中でもかなりレアケースです。うちの子も、自分もそうなっちゃうのかと、どうか過剰な心配をされませんよう。お願いいたします。(私もだいぶ聞いたり探したりましたが、似たケースがまったく見当たらなかったくらいです)
現在進行形での目のトラブルはありますが、それ以外は元気に楽しく学校生活を送っています。



そしてレアケース故、残念ながら今まで手探りで情報が殆どありません。もしももしも同じような状況の方がいらっしゃいましたらメールやメッセージをいただけたら嬉しいです。

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2020.1 久々のMRI

前回謎のできものでひっかかってしまったので緩やかな経過観察に入っていたのに逆戻り。半年スパンに戻ってしまったMRI検査です。

造影剤も復活...

 

今回のMRI、まあすったもんだでした

まず、今までスムーズだったトリクロシロップでの入眠に失敗。途中で起きてしまって泣く。久々に追加のお薬が投与。

これが入ると検査後なかなか起きない、起きてもフラフラになってしまいます。

小学生だし、もう入眠なしでやった方がスムーズだなとは思うんですが本人の希望でまだ半日入院してやってます。

 

そして前回イレギュラーな受診からMRIの予約を取ったため当日の眼科の予約が入っておらず、急遽オーダー。入眠前直前にバタバタと診察。

数日前に義眼側、血混じりの目やにが出ていたのでどうしても診てもらいたかった。(たぶん擦って結膜の傷がついちゃったんですが)

心配はなさそうだけど

あんまりゆっくりとは診てもらえず...

 

MRIで駄目なものってご存知でしょうか?

構造上強い磁力があるので

「金属」←これはよく言われますよね

金具がついている服はNGなのでよくチェックしてから向かいます。

「義眼」これも駄目でMRIに入る前に外します。色付けなどで若干ですが磁石に反応する素材が使われているためです。コンタクトレンズも駄目だそうです(ケース持参しましょう)

女性だとマスカラ、アイラインも駄目。

 

このシーズン盲点なのが

ヒートテック」!

ユニ◯ロの商品だけでなく、同じような機能性下着が駄目なんです。「レーヨン」という素材が入っていると大体駄目っぽい。保温性、保湿性から火傷を引き起こす可能性があるそうです。

気をつけていたはずなんですが...ヒートテックではなく他社のヒートなんちゃらだったのでうっかりしていまして。入ってて引っかかってしまった。

でも入眠してるから...脱がせられないし...

 

 

切りました!

そして処分

(火傷すること考えたらそりゃあもう)

 

大人にも当てはまるのでMRI検査の時は気をつけましょう。ヒート◯◯、ウォーム◯◯、ホット◯◯、大体駄目です。

 

ちなみに、「可動性義眼」もNGで

そもそもMRI、使えません。

ペグという金属製のものを入れるらしいのでそれでかな。といっても日本では未認可なので臨床的に入れてたり、独自に開発されたものになると思うんですが。

小児、特に網膜芽細胞腫由来の子に可動性義眼が向かない理由がこれです。大人になるまで、なっても検査が必要。遺伝性の場合は二次がんのリスクもあり検査が大事だけど被曝を極力避ける必要があるのでCT、PETはなるべくしない。

としたらMRIが受けられなくなるのはすごく困ります。

良いのが開発されたらいいな

先に認可か。。。

 

今回の検査、何もなく

電話がかかって来ないことを祈ります(かかってきたら何かあったってことだから)

病気のことを伝えました

息子に病気のことを伝えました。

何のきっかけだったか知りたがって。

 

ああ今言った方がいいのかなぁと何となくそう思って話をしました。

ブログの初めに書いてあるようなことです。

 

目が違うこと それが義眼ということ

1歳より少し前に死ぬかもしれなかったこと

 

最近生きるとか死ぬとか前世とか生まれ変わりとか寿命とか。興味がすごい!!

そういうことを自ら学んで知りたがっていたのであえて死という言葉を使いました。小学1年生ですが...図鑑などをよく読んで深く知ろうとしてびっくりするほど物事をよく知っている子だと思います。

 

おばあちゃんが見つけてくれたこと

沢山の人が助けてくれたこと

幸運だったこともいっぱいあること

1/15000人の難しい病気だったこと

手術があったこと、残った目を大事にしないと見えなくなってしまうかもしれないこと。

癌の一種だってことも。

 

多分今伝えられることは全部。

 

そうしたら

息子からも色々質問... の嵐!

でもそれは悲しみではなくて、すごく前向きな質問の嵐

 

翌週会ったおばあちゃん(見つけてくれたおばあちゃんとは別の)に僕はこうだったと的確に説明している !(めちゃくちゃ心配してた人だから全部知ってるよ...と思いつつ)

後でよく知ってて驚いたことを聞きました(笑)

 

彼の中でこれからどう消化されていくかは分かりませんがありったけを込めて。

 

 

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どう伝えるか。いつ伝えるか。どんな風に伝えるか。

 

 

きっと同じ立場のお父さん、お母さん悩むと思います。私もすごく悩んでて

でもなんとなく今だ、と思いました。

それも正しいか分からない

 

 

それぞれの受け止め方があって

それぞれの個性があるから、ベストな時期って本当分かりません。小学生かもしれないし、高校生かもしれない。

 

 

ただ、嘘はついては絶対いけなくて、

それは簡単に見破っちゃうと思います。

言葉を分かりやすく変えたとしても、本当のことをというのがずっと心に留めていることです

 

 

 

 

 

一般向けの義眼勉強会を開催します

私も運営に参加しています小児の義眼の会「まもりがめの会」で一般向けの義眼勉強会を11月に企画しています。

今までは義眼が必要になったお子さん・その親、また小児期から成長した大人の当事者が集まり
悩みなどを話をできる会を開催していたのですが、少しずつ外に向けても正しい情報を伝えていきたいと考えていてはじめて開催することになりました。

特に医療関係者や学校関係者・またサポート施設などの方に参加していただければなと。
(一般向けではありますが当事者の方も参加は可能な予定です。ただしいつものお話会とは流れが異なります)

まず

入園・入学時に困ったこと、
生活で困ったこと
こんなことを知ってほしい、伝えたい

という使用者側の意見を募集します。どんなご意見でもかまいません。
取り入れた形で内容を構成したいと思います。


患者同士・親同士で話をしたりする場ももちろん大事なんだけど、そこで完結してしまって、話された大切なことが外に出ていってなくて、いつまでたっても社会が変わらない…というジレンマがずーっとありました。だからこれは第一歩です。


はじめての試みなので集まってもらえるかどうかは分かりませんが(涙)
義眼が必要ということがどういうことかを少しでも正しく分かってもらえるようにと思っています。 

小さな試みが少しずつでも大きくなって、協力者や理解者が増えて、みんなが生きやすい世の中になっていったらという野望です。




ご協力いただける方は
こちらへコメントでもいいですし、mamorigamenokai@gmail.com  かwebsiteのコンタクトフォームより送ってください。
mamorigamenokai.wixsite.com

よろしくお願いします!

あと密やかに、義眼についてのイラストをまとめています・・・密やかに・・・