うみをすすむ

0歳10ヶ月、網膜芽細胞腫(レティノブラストーマ)という目の小児がんで右目を摘出した息子との日々のこと。病気と向き合う記録。

義眼での入園のこと(一年たって)

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先日入園から一年、進級しました。
息子、二歳になってすっかりお兄ちゃん。と言っても朝送って行く時は必ず泣いていますが(笑)

言葉がポンポン出てきて大人びた発言をすることもあるし、あちらこちらと歩き回るし、
園では遊びを開発したりお友達とコミュニケーション取りながら遊んでいたりして
一年って時間はこれほど人を成長させるんだなと…本当驚きです。

入園の面接に行ったのは手術後退院してすぐ。とにかく面接だけでもと考える余裕などなかったけれど行って
まだ義眼もはめられる状態ではなく眼帯をしていました。
無理をしてでも行ってよかった。今の園に入ることができてよかった。そう思います。

はじめの方は義眼フィッティング中ということもあり回る回る…ひえ〜ということが何度も。
都度保育士さんに対応していただいて本当感謝しかありません。
最近はフィットした義眼ができて殆ど回らなくなりました。

これから保育園、幼稚園という方からメールを頂いたりすることもあるので
入園の時はどうだったか、入園当初も書きましたが
一年振り返ってもう一度まとめてみました。
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(1)電話での説明より会って説明
電話で少しお話した時は対応に困っている感じでした。
障がいのある子供も預かっている古くからある園にも聞いてみたのですが過去一人ということだったので
本当に対応が分からない、のが現状なのだと思います。
実際に連れて行って話をする方が絶対に良いです。印象が(良い方向に)全然違います。


(2)義眼についての先入観がみんなある
やっぱり義眼は「球形」だと思われていました。(私もはじめそうでしたが!)
だから義眼がとれた、とった時に大きな穴があいていて…それが怖い。
この誤解をまず解く必要がありました。
私は園長先生や保育士さんの前で実際に取って見せて説明をする時間をいただきました。


(3)「はめはずし」をしてもらえるかは自治体、園によって異なる
これはメールを頂いたりして分かったのですが、自治体によっては義眼の出し入れを他人がすることを禁じている場合があるそうです。
(調べた限りでは国でははっきり禁じているものはなかったと思います。)
園でも方針によって変わってくるのでまずは聞いてみるしかありません。
対応していただける場合は必要なスポイトなどを預けて、
無理な場合はまわった時などに対応できるようアイパッチなどを預けておいたり、都度園に出向いたり。いずれ自分で対応できるようになるのでそれまで、ですね。

私は今の所お願いはしていませんが
目薬は他の薬と同じように「投薬指示書」を主治医よりもらって提出すればしてもらえるはず。


(4)他の保護者に言うかどうかは…様子をみて
これは今でも悩んでいます。が
一年目はかなり義眼が日常的に回ってしまっていたので、万が一直しているところを見てびっくりされないようにとお話をしました。規模が小さい園なのでクラス10人以下という状況もあったかもしれません。
ただ、話した時になんだか腫れ物に触るような感じになってしまって。私としては「びっくりしないで」という事だけを伝えたかったのですが、義眼であるということを重く受け取られてしまったようで失敗したなぁと思っています。

進級して環境が変わった今は様子を見ていますが基本的に義眼であることは伝えないでおくつもりです。回らなくなりましたし、普通の人は分からないと思うので。
(保護者の方になんと眼科医の方がいらっしゃってその方には分かってしまったようです!…まぁあまりない例です…)

ただお友達との間で義眼であることで何かトラブルがあったり、保護者の方に聞かれた時はお話をするつもりです。
隠すことではないけれど、積極的に言うことでもない。
色々想定はしておくけど、都度対処というのが今の心境。


(5)先生(保育士)さんとは考えを統一しておく
統一しきれてなくて(私が迷っていたのもあるのですが)トラブルがあったことがありました。
日々のケア、お友達と何かあった時、保護者に聞かれたら、子供本人への目のことの伝え方 等々
どういう対応をするのか、ということの擦り合わせは大切だなと。
今日どうだったかという毎日の報告、そして懇談などの機会にも細かく話をするようになりました。
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→入園の時に作った「義眼のはめはずし」のイラスト説明があります。
お役にたつかどうか分かりませんが必要な方がいらっしゃればお送りします
marmom03@gmail.comまで

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おしゃべりするようになってきて、自我がでてきて、
自分の義眼のことも分かってくるかな、お友達と何かあったりするかなと色々不安。
多分これからの方が問題や悩むことも多そうですが…今年はどうなるかな。

外来 2015.4月(記録)

外来が2ヶ月おきに伸びたので久しぶり。


な、長かった!!!

しばらく眼底検査をお休みするため細かく見てもらい長くかかったのでした。
まだ座ってできない眼底検査。

子供にとってはトラウマになる検査です。
座ってできれば痛くはない検査なのですが、まだ意味が分からない2歳児には
ぐるぐる巻にして固定するしかありません。

変な目薬を何度も入れられて(瞳孔を開く目薬。最大に開くまで入れるので一回では大抵終わらない)、あげくのはてにシーツでぐるぐる巻き。
器具で目を無理矢理こじあけられ、隅から隅まで変な機械で見られる。

文字にしただけでもトラウマになりますね…
座ってできる5歳くらいになるまで眼底検査はお休みして
MRIでのフォローになります。
MRIでも細かいところは分かるそうなんで、5年は何ヶ月かおきにあるし
大丈夫とのこと。

今回目薬が涙で流れてしまって瞳孔が開ききらず、この恐怖の眼底検査を二回することに!
息子は「おわった? おわった?」と何回も聞いてくるし…
ほんとうにごめんね。怖かったね。

診察が一年経つといろんな看護師さん、先生達とも顔見知り。
泣きわめく息子を横目に
その間大きくなったねぇと微笑む大人たち。ごめんね息子。

でも、本当に大きくなったね。
もうぐるぐる巻専用のシートは入らないし、バスタオルでも入らない。
シーツでしか巻けないくらい大きくなったね。
力も強くなったし、色んな事が分かるようになったから
少しお休み。大きくなったら
座って見てもらおう。

「今から予約は取れないけど5歳になったらやろう」

いつも厳しい面持ちの網膜専門の先生なんですが、この日は優しかったです。


小児科では触診など。
この先生は何気ない会話の中でも子供の発達面とか異変などもしっかり見ていると思うのです。
やらせるのではなくて、自然にふっと何かを書かせてみたり、遊ばせてみたり。
だからすごく信頼しています。

気になっているのはやっぱり二次癌、転移。
浸潤がなかった場合でも数年後癌が出て来る可能性があるのかどうか。

同じ病院で過去数例あったということ。
手術から数年後、脳に腫瘍ができてきたそう。
血液にのって移動したものが出て来たのか、くすぶっていたものが数年後発現したのか。
「5年寛解」ということにはやっぱり意味があるのだな…
でもフォローはできていて、その子は今もとっても元気だそう。

この病院はフォローは本当細かいと思うので
何かあってもなんとかしてくれる、そう信じています。

次回はまたMRI
半日入院です。

外来 2015.2月(記録)

予約時間を間違えてまちぼうけ。
今まで午前の予約が多かったので午後なのを完全に見落としていました。
長い長い待ち時間、家に帰るには中途半端なので近くの友人のお店に遊びにいって
それから再度診察へ

はじめは眼科。いつもは予約していても一時間、長いと二時間待ちは当たり前なのだけれど拍子抜けするくらいすぐに呼ばれました。
長いと思ってパンを食べさせていたものだから名前を呼ばれてアワアワ。
そして途中で中断されたものだから大泣き…嗚呼

先生による義眼床チェック。
義眼床は綺麗だということで問題なし。
気になっていた下瞼のふくらみ。どうしても義眼を入れるとふくらんでしまう。
将来的にこれが続くとベロンと下がってしまうのではと心配なのです。
先生によると、外に向いたりしていないからそれは今の所大丈夫だろうと。
万が一状態が悪くなってきたら形成術も考えましょうとのこと。
日常にはほとんど不自由はないのだけれど
義眼、まだまだ分からないことだらけだなぁ。これから一生続く息子の義眼生活。
想像ができないことばかり。

最後に「網膜芽細胞腫全国登録参加のお願い」の同意を聞かれました。
どうやら今、眼科学会が統計をとっているようです。
網膜芽細胞腫全国登録委員会…そんなのあるんだね…
人数や発生場所、頻度の移り変わりや病気の兆候、腫瘍の大きさ、治療の効果などを統計をとってこれからの治療や治療法開発に役立てるそう。
患者数が少ないからこういう統計はとっても意味があると思います。


続いて小児科。午後診ははじめてなのでブースが違って変な感じ。

触診問題なし。
先日のMRIの画像を見ながら説明。
MRIの結果も再発の兆候は見られずということでホ。

以前義眼台の様子もMRIでチェックしていると聞いたのですが、左右差などもこれでチェックできるそう。摘出した方は眼球がない分、成長をうまくしてくれるかどうか分からない訳です。
義眼や義眼台は見た目を整えるだけでなく成長を促す意味もあります。
まだ息子は一歳。これからどんどん体が成長していく。
もし左右差があまりに大きくなってきたら義眼台の入れ替えや形成術なども考えるということ。

義眼台は中学生くらいで入れ替えしないといけない、ということも前に聞いたのですが
する人としない人は居ると。

今の義眼台でうまく成長してくれればそのままでいいし、
思ったほど効果がなく、左右差が出て来た場合はタイミングを見て更に大きいものに入れ替え
状態を見ながら、ということみたいですね。

入れ替えは全身麻酔の手術。負担もかかるしまたフィットする義眼を一から作り直しになるので
無い方がいいけどなぁ。(しかし下に下がり気味だしなぁ…)

分かっていたことだけど、そうか。人の手で成長を促して、細かくみていかないといけないんだな。人の体ってすごいバランスでできてるんだなと改めて。


あ、今回のMRIで中耳炎がだいぶ治っていることがわかりました!よかったよかった。
そして次回から小児科も徐々に間隔があいていくことになりました。

すくすくの入会申し込み

網膜芽細胞腫の家族の会「すくすく」
しばらく入会申し込みはできない状態だったのですが
再開されたようです。(2015.2現在)

網膜芽細胞腫の子どもをもつ家族の会「すくすく」 - 網膜芽細胞腫の子どもをもつ家族の会「すくすく」


入会してもしなくてもいいのですが
なにぶん15000人に一人という患者数が少ない病気。
病気自体も聞いた事がない、治療やら手術やら義眼やら、と罹患が分かってから知らない事だらけではっきりいってパニックになります。
その上「同じ病気の人と出会う」というのは難しい状況。
だから情報を得たり、患者の会や勉強会に参加したりできるというのは非常にありがたく私は助かりました。

HPには病気に関する情報や手続き関連、情報の少ない義眼についても分かりやすくまとめられています。まずは一読をおすすめしたいサイトです。

色々書きたいことが溜まっているのですが…
息子がうまく寝てくれない日々。
子供との日々はいつも楽しいですが、
自分1人の時間は相当頑張らないと、まだまだ作れない…

また時間を見つけて書きます!

日帰り入院MRI 4回目 2015.1月(記録)

年明けの定期診察は3ヶ月ぶりのMRI
4回目といっても大きな検査。やっぱり緊張します。
でも緊張を無くしてはいけないような気もしていて。
息子にとって無くてはならない大切な事だけれど
非日常な事に慣れてはいけないし、油断はいけない。

お昼すぎのMRIだったので朝10時ごろから病院へ。
感染症チェックがあるので診察があります。
感染症チェックといっても殆どは通常の小児科診察と同じ。
万が一感染する病気の疑いがある場合は隔離病室になります。
重い病気の子も多数入院する病院だからこのあたりは厳重。
病棟にあるプレイルームが今回掃除中だったんですが、おもちゃ類が恐るべき細かさで消毒されていました。
そして廊下や手すりなども一日のうち頻繁に掃除。
万が一が絶対に起こらないように、なのですね。

もうお決まりのように診察室に入ったら泣く息子。
でもアンパンマンの車(ニューフェイス)を見ると段々ケロリ。
大体こういう時は嘘泣きなのです…もちろん診察は嫌だとは思いますが条件反射で本気じゃないのです。息子よ、先生にも私にも見抜かれているよ(笑)

触診も問題なく、歩いたことを伝え、実際に息子もトコトコと披露。
「上出来だね!」とお墨付き。よかったね〜
前回溶血で40越えだった腫瘍マーカー(NSE)値も大幅ダウンで10ちょっと。
ホッ。大分下がりました!

そのまま病棟に移動して点滴。
そしてお昼ご飯を食べて入眠、MRI撮影へ。
いつも眠らせてさあ撮影、という直前でギャン泣きするので強い薬を結局入れられてしまっていたのですが…今回はなんと起きなかった!
実はここ数ヶ月眠りが浅い事が気になり遂に数日前から断乳を決行していて効果があったのかも。
強い薬で強制入眠させてしまうと覚醒が遅くなるし、体にもよくないので
軽い薬だけで済んでよかった。

スムーズにいったし早く帰れるだろうと思ったら、息子、起きない…
起きて、さあ、となってもその後に予定していた眼科の受診も一向にお呼びがかからない…
結局18:00をまわり夕食が運ばれてくる時間、
だけど半日入院なので息子の分の夕食はなく…そしてやっと眼科受診。
先生が小児科病棟まで来てくれました。外来がこの時間までかかったとのこと。
この病院眼科がすごく有名なので患者さんがめちゃくちゃ多いんですよね。
主治医が変わって二回目ですが、すごく丁寧にみてくれてこちらの質問にもはっきり答えてくれましたし、いい感じです。

<義眼部分について>
・義眼を少し大きめに作ってもらっていてちょっとそのせいか腫れているのだけど大丈夫か
→義眼床をみても大丈夫、悪くない。大きさは良いと思う。小さい子は大きめの方がいい。義眼の方は成長しないから大きめに作って成長を促した方がいい。

・義眼の乾燥については(最近乾燥がはげしいので)
→市販のソフトサンティアで点眼。

ヒアレインはどうでしょう?(ドライアイとか潤いの目薬)
→悪くないけどジクアスという目薬の方がおすすめかも。でも目やには増えると思う。基本的にはソフトサンティアでいいと思う。乾燥がひどいようなら処方もできる。(この病院は大体ソフトサンティア押しではあります)
  

などを聞きながら義眼床をみてもらいました。

帰ったのは19:00すぎ。美味しいものでも食べて帰ろうか と思っていましたが
そんな気力もなく、ぐったり。
でも年明けての一回目、結果は全て良好でよかったです。

あれから一年

息子の病気が分かってから一年が経ちました。

正直12月は心が落ち着かなくそわそわしていました。

また何かあるんじゃないのか

私にとっては12月という月はそんな季節になってしまったのかもしれません。
病気を宣告された日、
目を手術して神様に返した日

記念日とは違いますが一生忘れないでしょう。


きっと毎年こんな複雑な気持ちになるんでしょうが
それでもとにかく、無事に一年を迎えられたこと
はじめてのお正月を病室で過ごすことになったのもあり
家族みんなでお正月を迎えられることが心から嬉しいです。


昨年末からとにかく走り続けてきました。あっと言う間でした。
息子と向き合って走り続けてきました。

日常の生活にプラスして毎月の検査に義眼の調整。
日々の心配もプラスαなので立ち止まる暇もなかったけれど
本当に沢山の優しい支えがあって乗り越えていけました。
私自身の世界の見え方も変わりました。


また一年、一年とひとつずつ大切に重ねていけますように。



そして
お正月を前にして
なんと息子、歩きました!

遅かった分もう感動の嵐です!

ただいま
ドヤ顔で歩いております。

だるまのおはなし

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息子の病気が分かる一日前
友人のお店から連れ帰ったものがありました。
そのお店は雑貨をはじめ日本全国の民芸品などをセレクトして扱っているのですが
どうしても気になって購入したのが「松川だるま」でした。

仙台張り子のだるまで青色のちょっと珍しいだるまです。
その風貌も珍しいのですが、このだるまには目がはじめから入っています。
普通のだるまは願いが叶った時に片方の目を墨入れしますが
このだるまははじめからある両目で「家を見渡す」のだと。
そして子供の健やかな成長を願うだるまなのだそうです。


そしてこのだるまさんがうちに来て翌日
息子の網膜芽細胞腫が分かりました。


そして後から調べたらあの片目の伊達政宗(独眼竜)にもゆかりが…
もうなんだか鳥肌が立ちましたよ。
普段そこまでスピリチュアルな事などを信じる方ではないんですが
このだるまは息子の異変を私に教えてくれたんだなぁと思っています。

今でも朝行く時に声をかけたり
心の中で「どうぞよろしくお願いします」とお願いしたり。
息子のために沢山頂いた日本中のおめめの神様 と共に見守ってくれています。

普通のだるまさん達も息子と同じ右目に目が入っていないこともあって
なんだか親近感というか
よくだるまゆかりの所に行ったりもしている今日この頃。


義眼を入れた息子はきっと特別大きな願いを叶えられるんじゃないのかな


▼松川だるまが作られる様子です。丁寧な仕事。
眉が実際にふさふさのものもあるんですよ!
ページ一番下のだるまさんが息子を見守ってくれています。
だるまさんができるまで | 手とてとテ -仙台・宮城のてしごとたち-