うみをすすむ

0歳10ヶ月、網膜芽細胞腫(レティノブラストーマ)という目の小児がんで右目を摘出した息子との日々のこと。病気と向き合う記録。

義眼が取れた話、そして「みえるとかみえないとか」という絵本

「みえるとかみえないとか」
りんごかもしれない、のヨシタケ シンスケさんが絵の本です

みえるとか  みえないとか

みえるとか みえないとか

視覚障害について、見え方について考える本、
「ちがいをかんがえる本」


義眼の必要な子(この中の登場人物だと宇宙人側なるのかな)の親としての率直な感想を書いてみたいなと思いました。

宇宙飛行士のぼくが降り立ったのは、なんと目が3つあるひとの星。普通にしているだけなのに、「後ろが見えないなんてかわいそう」とか「後ろが見えないのに歩けるなんてすごい」とか言われて、なんか変な感じ。ぼくはそこで、目の見えない人に話しかけてみる。目の見えない人が「見る」世界は、ぼくとは大きく違っていた!

絵のかわいさ、地球を飛び出して宇宙もでてきちゃう。可愛いのに、丁寧に書かれていて分かりやすく入りやすくよくできているな・・と思いました。
けれど、これは、絵本の体裁をとっているけど大人のための本だと思うのです。


子供は「違い」と思っていないし、ありのままを自然と受け入れている

少し前に描きましたが、今年の春ごろ、保育園で息子の義眼が取れるということがありました
marmom.hatenablog.com


あの時、義眼が取れた時の5歳の子供達の反応はそれぞれがありのまま受け止め、最小限の言葉で理解し、自分で考えていたということです。
違いとは思っていなかった。園長先生や、私、大人の方がその予想外の反応に感動してしまったくらいでした。


そして、この夏に実家に帰省して甥っ子(小学校低学年)姪っ子(息子と同じ年)と遊んだ時にも痒かったのか義眼を自然に取ってしまったということがありました。甥、姪には以前言葉で話したことはあったのだけど、実際に取ったところは見たことがなかったのです。

目が取れ、目がない姿を見て甥と姪は本当にびっくりしてフリーズ。(私も知らない人が見た時の反応をこれほどストレートに感じた瞬間はなかったかもしれません)

でもそのあとすぐに姪はいつも通りになり遊びだし甥はびっくりしすぎて泣きそうになっていたんだけど
聞くとそれは大好きな息子の想像していなかった姿にびっくりしただけだ、でも・・・息子くんは息子くんだしな・・・と誰に言われるでもなくつぶやきました。

そもそもこの年代の子は大人が思うよりもずっと「ありのままを受け入れていて区別していない」とすごく感じました。


こどもはそもそも違いを面白がり、知りたいと思っている。何故、何?に答えられる大人がいない

保育園で事を知った子供達。私を見かけると色々聞いてくる子がいます。

「どっちの目がぼくと違うんだっけ?」
「坊くん、運動会のときって目だいじょうぶなのー?」
「片方だけだとかわいそう」

ストレートにどんどん疑問をぶつけてきて、知ろうとしてきます。
興味津々に、思ったことを口にだしてくる。そこに迷いはありません。

そういう時は私は淡々と事実を伝えています。

「右側だよー!」
「大丈夫だよー それにいつも取れたりしないでしょう。そんなに取れたりしないものだよ」
「赤ちゃんの時からだから、坊くんにはそれが普通だしかわいそうじゃないよ」

そうしたらこどもたちは、理解しています。(質問を重ねてくる子もいます)
そこで大人が言葉を濁してしまったり、その場を取り繕ったりすると多分悪いことのように捉えていくんじゃないかなと。

大したことではない、特別なことじゃない、って思ってほしい。その先で違いに興味をもって知ろうとしてくれたら。

「見え方」がちがううだけなのにみんなすごく気をつかってくれてへんなきもちだった

というフレーズが出てくるんですがこれは本当にそうで(涙)・・親の私からみても片目の子で視力がある程度あれば、不便ないので気を使われると本人は困ると思います。私も伝えるとすごく深刻に捉えられてしまってあーどうしよう、と思うことがあります。

かわいそうな人は助けてあげないと、という感じに大人はそういうことを教えてしまうと思います。
でもその先回りが傷つくことがあり・・・

「私は分からないんだけど、何かした方がいいことってある?」と聞いてくれるのはとても嬉しかった。
その会話の先でこちらも知ってほしいことを言えたりします。



道徳や感想文の題材としては・・・使って欲しくない

子供に読ませたい、道徳に、って感想もみたけれど、この本を息子のいるクラスでわざわざ取り上げたりしたら正直なところ嫌だなぁと思います。本人もどうだろう?嫌じゃないかなぁ。

家庭で自然に読んでほしいなと思いました。

そして当事者の悩みはこの絵本のような話だけではなくて、そこに至った背景とか色々絡み合っています。これはほんの一角、のスタートのはなしです。




大人の方がハードルになっている。だからまず大人が読んでほしい。

いろんな人がいるという経験を既にしている親、大人が思い出す、考えるきっかけにはとってもいい本だと思うし、考え方や子供にどう説明したらいいか。というヒントが詰まってる。


(全盲のひとの見え方はとても勉強になったし、のりものという概念って面白かった!)

子供は・・どうかな? 宇宙人が出てきたり、会話が面白いと思うかもしれないけれど、経験がなければ結びつかずただの面白い本。違いを違いと思っていないありのままを受け入れられる時期に、出す必要はない気がします。
「普通」や「違い」に出会って経験して疑問をもった子に対して、はじめていい本になるのではと。

そして大人の意識が変わっていったら自然と子供に伝わると思います。

ハードルの多くは大人の反応の方です。




息子にはたぶん私から読まない

息子には私から読むことは今のところ考えていません。小さいですが自分で色んな気持ちを抱えては乗り越えてきて、考えてきているように感じるし、彼は自分のことを何かに置き換えたりするのをすごく嫌がるのです...(きっとそんなことぼくは分かってるって、感じなのかな。)ある日見かけて手にしてみてたまたま読んだ、そんな形でいいと思っています。






いろいろ書いたけれど
こんな感想もある・・・ということで。