発覚から診断まで(3)
以前、仮性クループで入院した病院も市では割と大きなところだったけど更に大きくて
人でごったがえしていた。
お店の近くなので良く知っていたけれど入るのははじめて。
受付の仕方が分からないので係員さんに聞きながら、やっと診察棟へ。
眼科は見たことがないような人の数。
眼科ってこんなに多いのか…というよりこの病院が有名なのか
主人は幸い休みだったけれど少し用事を済ましてから来るとのこと、クリスマスが終わってもお店は年末の予約がかなり入っていたし、なによりおせちの受注分もあったため、仕込み、準備が山のようにあった。
私たちにとってはクリスマス〜年末はお休みではなくて、一年で一番、寝る時間もままならないほど忙しい時。
なかなか名前は呼ばれない。紹介状があってもこの人の数。
どうにもならない時間が流れていた。
そのうちに用事をとりあえず済ませた主人がやってきた。一人ではなくなってホッとする。
「そういえば、○さんってここの先生じゃなかったっけ? 眼科だった気がするんだけど」
その人はお店によく来てくださるお客様。この病院の方だということはなんとなく覚えていたけど、私は科までは知らなかった。
ブースだけでも10以上ある眼科。先生の数も沢山だったから、この時はいらっしゃるのかどうか確かめる術もなかった。
名前が呼ばれて指定されたブースに入る。
網膜専門の先生。
紹介状で概要は把握されていた為、すぐに見てもらった。
「先天性白内障か腫瘍か…もう少し調べてみないとはっきりした事が分からないので、まず眼底検査、超音波検査をしましょう」
「目の奥を見るので、手足を抑えます。こちらの同意書を書いていただけますか?」
それは暴れるのを抑えて検査するので、もしその時に傷ついたりしてもかまわないか、というもの。
傷つけられて嫌な親はいない。でもしょうがない…息子はまだじっと検査をうけることはできない。
同意して、瞳孔を開くための目薬を何度か点眼した。検査室は出たり入ったり。それも大泣きで大変だった。
目薬なんて、大人でもちょっと嫌だ。当たり前だ。
しばらくして瞳孔拡大が最大になったところで検査。
眼底検査は壮絶だった。ぐるぐる巻に固定
息子は赤ちゃんとしてはかなり大きいため、固定するバンドがギリギリ
やっぱりあばれて大泣きする
私たちはブースの外に出て泣き声を聞くしかなかった。
その結果は割とすぐに出て再度ブースに呼ばれた
「結果としては90%以上の確率で網膜芽腫だと思います。更に検査するためにCTをとる必要があります。」
先生から言われた言葉は想定していた最悪の病名だった。
白内障だったらいいのに。だって手術で直るもの。どこかでそう思っていたけれど
甘くなかった。
主人もここで重大さにはっきり気づいたみたいだった。
「CTは今日とれるんですか? できれば今日やって欲しい」
もう一日も待ちたくなかった。
これは癌だ。
網膜芽細胞腫だったらその先が問題になる。
進行度合い、摘出なのか、温存できるのか。転移はないのか。
知らなければいけないことは山のようにある。
途中で母に結果を電話した。たまたま妹も居たみたいで知らせた。
妹には少し上の甥っ子、夏に生まれた姪っ子もいる。
みんなショックを受けていた。あたり前だ。
こんなに身近な人が癌だなんて、誰が想像しただろう。
しばらく待って、CTはその日撮れることになった。
でもCTを取るには眠らせないといけない。眠る薬をもらい飲ませてから授乳。
ねかしつけに入ろうとした時に
「え、どうしたの?」と聞き覚えのある声。
お店のお客様だった。やっぱりここの眼科の先生だったんだ…
「目の癌みたいなんです」
しばらくして戻ってきて網膜の○先生は僕の同級生でいい先生だから大丈夫。
僕も一緒に結果を見るから。そう言ってくださった。
最初に受診した眼科の先生のことも知っていた。
この方、とってもとっても朗らかで素敵な人なのだ。
奥様といつも来てくださって、こちらまで笑顔になってしまうような大好きなお客様だった。
ものすごい偶然。
そしてものすごく心強かった。
知ってる人がいるだけで救われた気がした。
眠った息子は移動用のベッドにのせられ検査に連れていかれた。
30分くらいしてぐっすり眠ったままの息子は帰ってきた。
そしてそのまま、反対側の目の眼底検査(途中で起きて大泣きだったけど)
CTの画像と共に告げられたのは
「右目は99%網膜芽細胞腫で間違いありません。この病気の特徴は石灰化で、それもここに見られます。網膜が腫瘍に押し上げられて網膜剥離を起こしている状態です。左目は見たところでは綺麗です。」
「小児科の見地からも検査する必要があります。これから小児科に行ってください」
腫瘍は大きかった。見てすぐ分かる。右目のうしろは白く映っていて左目と明らかに違う
これが全て腫瘍だと分かった。
網膜剥離…この子いつから目が見えてなかったんだろう、
どうして気づいてあげられなかったんだろう。
小児科の先生が走って駆けつけてきた。
息つく暇もなく小児科のブースに行き頭、首のチェック、そして内蔵の超音波検査。
この子には背中に血腫(生まれつきでよくあるもの)もあったのでそれも合わせてみてもらった。
触診、超音波では何もないとのこと。
「明後日で検査機器が止まってしまうのよ。年内の検査ができるのは明日が最後なの。」
そうだ、今日はもう26日。病院といえども休みがあるんだ…
「だから明日できるかぎりの全ての検査をします。今急遽、押さえにいってるから。
大変になるけど、なるべくできるようにしよう。」
そしてそのまま小児科に入院することになった。