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うみをすすむ

0歳10ヶ月、網膜芽細胞腫(レティノブラストーマ)という目の小児がんで右目を摘出した息子との日々のこと。病気と向き合う記録。

義眼台のこと

義眼のはなし コラム

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義眼台について聞かれることが多いのでまとめてみました。
前にも書いたことがあるのですが、一度いままでのことを一つにしたいなと思っていたのです。
<注意>
※義眼台の定義自体がよく分からないところがあるので、ここでは「眼球摘出後のスペースに入れるもの」という広義の意味でこの名称を使っています。(もあさんコメントありがとうございます)。医師の方が使用する「義眼台」の認識とは異なる場合があります。
網膜芽細胞腫の場合です。別の疾患だったり後天的な事故などの原因での義眼台挿入の場合は若干異なる場合があると思います。
※子供の場合です。大人の場合はまた異なってくると思います。
※あくまで経験と調べた範囲ですので、もし間違っているなどありましたらご指摘ください。

義眼台とは

義眼台は台と書きますがボール状のもの。
眼球摘出後に空いたスペースを埋めるように入れられます。結膜で包まれていて外からは包んだ結膜が見えるだけです。中身は見えません。
この上に義眼を入れます。(だから台と言うのかな)
「義眼」と聞いて想像する形、球形のがごろっと入っている。が実はこの義眼台に近いのかもしれません。
実際の義眼の方はこの義眼台にのせるので球形ではありません。




義眼台を入れることのできる病院

眼球摘出の手術は多くの病院でできるのですが、この義眼台を入れる手術が可能な病院は数えるくらいしかないようです。
つまり同時にできる病院はかなり少ない。位置を留めるのが難しいと聞いたので技術的にできるお医者さんも少ないのかもしれません。
あと日本で基本的には認可されていないという問題も。


今まで聞いた感じでは関西以西の方が多いのかなという印象。

義眼台は入れる人もいますが、一番患児が集まる国立がんセンターが基本的に入れない方針というのもあり入ってない方が多いようです。

うちはたまたま義眼台を入れる方針の病院だったようで、摘出と同時に義眼台を入れることに。
何故入れるところが少ないのかは「メリット/デメリット」の部分で。




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義眼台の素材

義眼台には、レジンやアクリルといったつるっとした樹脂のボールが主に使われます。
珊瑚やハイドロキシアパタイト、メドポール®といった多孔性(小さな穴があいてごつごつしている)といった素材も用いられることがあるそうですが
日本で現在入れない方向性のようです。

多孔性のものは組織と親和性が高いのですが、逆に言うと取りづらい。癒着をおこしやすい。
あと感染症の問題も。

網膜芽細胞腫の場合は再発、転移のこと、また初回手術がかなり幼いため、子供の成長の事を頭に入れておかなければなりません。
となると、取りづらい、というのはかなりのデメリットなのです。

○可動性義眼

可動性義眼は日本では残念ながら認可されていません。
関東に独自に開発している眼科さんがあるようですが…詳細は不明。
あと試験的に入れている方はいるとか。

残された筋肉を利用して、多孔性のボールを台に金属パーツを取りつけ挿入。義眼を動かすようです。
欧米などでは使用されている模様。(メドポール®が有名?)
あと韓国などは義眼についてちょっと進んでいるのかな?

多孔性であること、金属が炎症を起こしやすいこと。
露出の可能性が高めなこと。
意外と位置調整が難しいこと。
この病気の子にはちょっと問題が多そうで、現状リスクとメリットはかみあっていない状態かなと。

個人的にはもし将来的に大きくなって子供が望めば検討したいという気持ちです。



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義眼台のデメリット

まずはデメリットから。
大きく2つだなと思っています。

・異変がわかりにくい
義眼台が入る分、後ろのことは見えません。
どうなってるか確認するにはMRIなど画像診断に頼るしかありません。
もし後ろで再発・転移が起こっていたら手術で取ることになります。

・露出の可能性がある
異物を入れるので、拒否反応を起こしたりすれば出てきてしまう。
出てきたら再手術か、入れるのを諦めるか。


万が一の可能性がある
その場合の再手術、治療は子供への負担が大きい。
プラス治療の過程を考慮すると...

入れない病院が多いのはこういう理由が大きいかもしれません。


息子が行っている病院はそういうこともあってかMRIなどの画像診断で義眼台の様子やその周辺の様子をチェックして状態変化をかなり細かく見ている印象です。

義眼台のメリット

デメリットもあるけれどメリットもあります。

・顔面の成長を促してくれる。

あったものが無くなるっていうのはこれからぐんぐん成長する子供にとっては大変なことで、無くなった分多かれ少なかれ左右差がでてきてしまいます。
左右にある目は特に顔面なので目立ってくる場合も。
義眼台を入れることで疑似眼球があるという感じになり、顔面の成長を助けてくれるようです。
台が入っている分顔面がフラット、つまりへこみなどもありません。


・義眼が薄くて済む
台がある分、義眼はすごく薄いです。
たぶん1/10とか、もっとです。
薄いということは体にかかる負担も少なくなります。


・多少動く
残っている目と同じように、とはいきませんが、台の動きで義眼が若干ですが動きます。
上下は苦手なんですが、左右は動くんですよ。
義眼が薄いことも影響していると思います。

<義眼台あり、目の動きの様子>
動画をあげ、考察している方が是非掲載して欲しいと送ってくださいました。
とても参考になる動画です。
ameblo.jp

※こちらの動画が掲載されているブログはリンクフリーではありません。
無断転載、リンクはくれぐれもご遠慮ください。


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頂いたメールの中に
「命が助かるなら目なんていいじゃない…」そう言われたというのがありました。
そして続きに「眼球を失うことは大変なこと、せめても自然に見えるように…と願うことは決して贅沢なことではないはず」とも。

命が助かるなら目なんていいじゃない。きっとその方を想って投げかけた言葉だったんだと思うし正論だと思います。でもそれだけで片付けられない気持ち。
残したかった大きな気持ち。
助かったその先は長いのです。そして片眼の子は両目ある子と同じ道を生きていきます。
乗り越えて強く、精神的な強さを持って歩んでいって欲しい、だけどフォローがあればきっと負担は軽くなる。



やれ再生医療だ、ipsだ、なんだという技術が出てきているのに今だに義眼の世界は亀の歩みな気がします。
(義眼台の情報は殆どありません。)


複雑な機能の目を0から再生したり、両目で見えるようになったりすることは、今後も難しいかもしれない。

でも、「動く」という機能に特化させること。
義眼の世界はもう少し進歩できるんじゃないのかなぁと


そうしたら、摘出することになった子供たちも
より強く、笑顔で過ごしていけるとも思うのです。